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2010.07.05

ヤクルト泥沼の内紛劇 -GM・監督の対立激化にVの灯消える?-

卓上野球機構の旧会誌「エンドラン」第10号より再録です。

2000年後期シーズン、ヤクルトは横浜と首位を争っていました。

シーズン終盤、対横浜最後の3連戦を控えて、ヤクルトは広島と対戦。

楽勝と思われたこの3連戦で・・・・・

「ヤクルトは優勝してはならない」

「GMは足利義昭だ」

横浜と凄絶な首位争いを演じているヤクルトだが、かねてより球団運営の方針で対立していたハギGM、モリタニ監督のチーム主導権争いが深刻化し、ペナント争いに重大な危機を招いている。


10月15日からの対広島3連戦はヤクルトにとって重要な戦い。翌日16日から横浜は巨人との2連戦を控えており、ここで横浜を離して、一気に抜け出したいところだ。モリタニ監督も「最低で2勝1敗」との決意で神宮へ。ベンチへ向かう長い廊下を歩いていると、向うからやってきた八重樫コーチが、驚いたように立ち止まった。

「あれ、監督。お体はもうよろしいんですか?」

「え、なんのことだ。私はピンピンしているぞ」

「でも、さきほど球団事務所から電話で『モリタニ監督は急病で入院したから指揮はとれない』と知らせてきたんですがね」

「バカな。なにかの間違いだろう。安心したまえ、大丈夫だ。ちゃんと指揮できる」

「でも…」

八重樫コーチは困ったように顔をそむけた。

「どうした?」

「い、いえ。なんでもありません」

そう言い残して、視線をそらせたまま、小走りに立ち去ってしまった。

「へんなやつだ」

モリタニ監督は肩をすくめるとベンチに向かう。すると、ベンチの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

まさか…。

入り口からそっとダッグアウトをのぞくと、驚いたことにハギゼネラル・マネージャーがユニフォーム姿で、ベンチ中央にでんと腰をおろし、メガホンごしになにやら叫んでいるではないか。

「球が速すぎるぞ。もっと球速を殺して、棒球にしなきゃだめだ」

「低めに集めすぎる!何度言ったらわかるんだ。真中高め、それだけを考えろ」

マウンドには、今日、先発予定の伊藤智仁。実戦さながらの投球練習に、肩で息をしながらGMの言葉にうなずいている。

――いかん!

モリタニ監督はすべてを一瞬のうちに理解した。ハギGMみずから、読売接待のため現場へ出てきたのに相違ない。勝手な真似はさせないぞ。ベンチへ入ろうとすると、背後から複数の腕がのびて、モリタニ監督の肩と腕をがっしりとつかまえた。

「な、何をする」

振りかえると、名前は知らないが球団事務所でいつも所在なげにしている、剣呑な雰囲気を漂わせた屈強な3人の男の顔があった。

「監督、無理はおやめなさい」

「あなたは、疲れている。しばらく休んだ方がいい」

「今日のところはGMにすべてを任せるんだ」

男たちの声は決して大きくはなかったが、腹の底に染みとおるような、有無を言わせぬ迫力があった。男たちの背後から、杖をついた小太りで小柄な男が近づいてきた。オールバックに撫でつけた銀髪と、時代遅れのレイバンのサングラスが、異様な雰囲気をかもし出している。銀髪が杖を持ち上げて軽く左右に振ると、男たちはモリタニ監督を解放して、直立不動の姿勢をとった。

「モリタニくん、だったね」

銀髪の声はしゃがれて、よく聞き取れなかった。

「きみ、幸せってやつはね、あとで思い出してみると、そりゃあいいもんだぜ。な。自分から捨てると、後悔するよ」

ささやくように言うと、銀髪はヒヒッ、と喉を鳴らした。どうやら、笑っているらしかった。それだけで、モリタニ監督は抵抗する気力を奪われ、腑抜けのようになり、こっくりとうなずいていた。

※             ※                ※

ヤクルト―広島9回戦を、モリタニ監督は左右を屈強な男にはさまれて、ボックスシートから観戦した。試合は、序盤から先発の伊藤が崩れて、まったく一方的なものとなった。ハギGMは、伊藤のOBが+3になっても、交替させようとはしなかった。マウンド上でさらしものになる伊藤は、この試合前まで、最優秀防御率争いをしていた。ハーラーでも横浜・斎藤隆や巨人・上原と並んでいた。それが、この試合で防御率を一挙に悪化させた。勝ち星も、当然ない。

「ハギGMが読売を間接的に接待」しているさまを、モリタニ監督は歯噛みしながら見つめていたが、いたたまれなくなり、「もう、いいだろう!」と叫ぶと、席を立った。そして、そのとき試合のなかったコバヤン阪神監督をみかけると、連れ立って近所のドトールコーヒーにお茶しに行ってしまった。

結局ヤクルトは、4-18、5-7で広島戦に連敗。第3戦は雨で流して貯金をふたつも減らしてしまった。同じ頃、ベイスターズは横浜で巨人に連敗。ハギGMの読売接待は、みごと奏功したのである。

「GMなぞ現場から見ればしょせん神輿のようなもの。それが突然指揮をとるとは、いわば信長が飾り物に据えた征夷大将軍・足利義昭が挙兵したようなものではないか」

「とにかく、この広島戦連敗は痛い。V逸すれば、それはGMの責任だ」

モリタニ監督は憤懣やるかたないといった態であったが、結局、その後の横浜直接対決にも負け越しているわけで、実はGMの采配がどうあれ、ペナントを奪うことはできなかったのでした。

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