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2010.06.10

猛牛首位強奪

卓上野球機構会誌「エンドラン」第14号からの再録です。

機構の2001年前期シーズン、パリーグは近鉄とダイエーが首位を争っていました。

そのときの最初の天王山での記録です。

※これは、あくまでも卓上野球機構で行われたゲームのプレイの結果を記事にしたものです。念のため。


5月18日の時点で、首位ダイエーは22勝13敗の貯金9。いっぽう2位近鉄は18勝14敗の貯金4で2.5ゲーム差まで離された。まさゆき監督としては、もうこれ以上、一歩も後退を許されない崖っぷちまで追い詰められてしまった。まさゆき劇空間覇道野球は、この劣勢をはねかえすことができるのだろうか。すべては19日からの対ホークス3連戦にかかっていた。

ここまで近鉄の対ダイエー戦の戦績は2勝5敗。日本ハム、西武、オリックスには勝ち越し、千葉ロッテともほぼ互角の成績。しかし、直接優勝を争う相手に負け越しているようでは、やはり、苦しい。しかもペナントレースは折り返し点を過ぎようとしている。19日からの3連戦では、勝ち越しが絶対条件。いや、ここは3連勝して一気に首位を奪っておきたいところだ。彼我の戦力差を考えれば、それで初めて、互角の立場で戦えると言っても良いだろう。
しかし、ホークスの強力投手陣を前に3連勝とは、日銀の現金輸送車から刷り上ったばかりの紙幣を強奪するにも似た、無謀な皮算用としか言いようがなく、ファンもマスコミも評論家も首位攻防戦とは名ばかりの「ダイエー2勝1敗の首位堅め3連戦」と見ていた。

だが、まさゆき監督は本気で3連勝を狙っていた。

「もう、3連勝、これしかありませんよ。ここで3つもらって、LOCKER監督の優等生野球にガツンと一発食らわせておかないと、ほんとうにペナントの火が消える。野球はデータではなく采配と気合だ、ということを、骨の髄まで分からせてあげましょう」

と怪気炎だ。

「もう切腹はしないのか?」

という報道陣の問いには

「ハラを切って優勝できるんなら、いくらでも切るけど、それでは責任をとったということにはならない。自分はボロボロになるまで選手とともに戦います」

とサラリと流し、いっぽうでボルテージは上昇の一途である。

18日昼すぎに福岡入りしたまさゆき監督は、さっそく選手を集めてミーティングを開き、ぺトラザ、篠原、吉田らのダイエーリリーフ陣攻略法に熱弁をふるう。

「ぺトラザはボールが先行したら必ずストレートを投げてくる。これを狙え打て。むろん、フルスイングでだ。いいかっ!」

――いてまえ~~!

「吉田の初球ストライクは見逃せ。ワンナッシングになると、やつは調子に乗ってストライクを続けて取りにくる。球種はストレートかスライダーだ。これを待ってれば絶対打てる!わかったかっ!」

――いてまえ~~!

「篠原は左のくせに左打者のほうが被打率が高い。ローズ、ガツンといったれや!」

――いてまえ~~!

「明日先発のラジオだが、やつはダイヤルが壊れとる。ランナーためるととたんにピッチングがおかしくなる。粘って塁に出えやっ!」

――い・て・ま・え~~!!

監督の一言ごとに「いてまえ~」の鯨波をもって応える選手たち。プロ野球チームのミーティングというよりも、●●●の朝礼のごとき異様な熱気が室内に充満し、打倒ホークスへの妄執の凄まじさを窺わせた。
さて、対するLOCKER監督であるが、首位の余裕か大戦力への信頼か、近鉄の敵愾心むきだしの姿をせせら笑う。

「やだねえ、カリカリしちゃってさ(笑)。采配と気合だって?野球は選手がするものであってですね、精神力や応援団がするものではないです。つまりデータですよ、データ。科学は裏切らないのだ。ま、1勝2敗で負け越しても、まだ1.5ゲーム差あるし、3つやられなきゃいいわけですよ。え、3連敗したらどうするかって?おのれええ下郎、下がりおろう!(3連敗なんて)するわけないだろう」

実は意外に神経過敏になっていたりするLOCKER監督であった。(笑)

ダイエー・ラジオ、近鉄・高村の先発で始まった第1戦。いきなりまさゆき監督の奇策が満員の福岡ドームを震撼させる。3回に高村がつかまると早くもリリーフ陣へスイッチ。

「ピッチャー、高村に替わり大塚」

のアナウンスが響くと、どおっと歓声があがる。3回から抑えの切り札投入とは、いったい何を考えておるのか。
放送席に陣取っていたアナウンサーも仰天。思わず解説の末広鮨主人に問いかける。

――いやあ、まさにダイエーのお株を奪う、早い回からの継投策ですが、これは予定の行動なんでしょうか?

「そうじゃないと思いますけどね。ダイエーのお株を奪うって言うけどね、あんた、大塚以上の投手は後ろにいないわけだから、瞬間風速的なダイエー的継投であって、まったく計画性が感じられない」

――あ、小林繁投手コーチがまさゆき監督に何か食ってかかっていますね。

「当然でしょう。3連勝のプレッシャーにまさゆき監督は冷静な判断力を失ってしまったとしか思えませんねえ」

これはLOCKER監督の感想を代弁してもいた。

「あーあ、まさゆき監督も気の毒になあ。もう少し投手に余裕があれば、こんな無残な継投をしなくてもいいのに。あ、松中くん城島くん、遠慮しなくていいから。ちゃちゃっと畳んできちゃってよ。どうせ大塚は準備できてないだろうしさ」

近鉄ベンチでは小林投手コーチがまさゆき監督と激論を交わしている。

「監督、3連勝したいお気持ちはよくわかりますが、大塚はいくらなんでも無茶です。切札を切ってしまったら、あとはどうするんですか。ここは打線を信じて中盤まで柴田や香田や丸尾や石毛や、そんなくらいの人たちで凌ぎましょう。大塚はそれからでも間に合います」

「なにを言っておるのかね、小林君。きみはこの初戦の重大さがわかっておらん。この3連戦は3つ勝たないと意味がないのだよぉ。それを初戦から落としているようでは、もう3連敗したも同然ではないか。ここで大塚を出し惜しみして負けたら、キミ、切腹できるか!」

「監督・・・・(切腹しないって言った癖に・・・)」

「それに、もう審判にコールしてしまったんだ。ここは大塚と一蓮托生で行こうじゃあないか。なに、昔、5連投だってした男だぞ。だいじょうぶ」

「・・・・・」

まさゆき監督の気迫にコーチも選手も押し切られた。

「これは、負けたら何をされるかわからんぞ。また、ハラキリ・パフォーマンスをされてもかなわんし・・・」

と選手たちが考えたかどうかはわからないが、とにかく気持ちは伝わったようで、中盤で打線が奮起して逆転。結局、7-4で初戦を制した。LOCKER監督は終盤、金持ち喧嘩せず、とばかり長富などを投げさせてお茶を濁し、翌日以降への余力を残した。

翌日、ダイエーの先発は永井。近鉄は左腕・前川である。

「前川ごとき、いつでも打てる」

というのは、ダイエー首脳陣の慢心であった。

前川は毎回のようにランナーを出すよれよれのピッチングであったが、ダイエー打線はその前川にとどめを刺すことがどうしてもできない。そのままズルズルと残塁の山を築き、終わってみれば得点は1点のみで、前川に完投を許してしまう。いっぽう近鉄は今日も打線が爆発して8得点。ダイエーが繰り出す渡辺正、水田ら救援陣を粉砕した。

初戦、第2戦を落としたことで、LOCKER監督にもようやく憂愁が漂い始めた。3連敗してはまさゆき監督の思う壺である。今後のこともある。それだけはどうしても避けたかった。

第3戦はダイエー先発星野が打ち込まれて終盤まで近鉄ペース。しかし土壇場の9回裏、ダイエーは近鉄のリリーフエース大塚をつかまえ、6-6の同点に追いつき、なお一死満塁と攻め立て、サヨナラの大チャンス。

「ああ、これで3連敗は免れるかな。それ、スクイズだ」

LOCKER監督は固い作戦で1勝を拾いに行った。しかし、しかあ~し、無残にもダイスは66の併殺。わずか2.7%の確率に捕らえられるてしまうその力弱さは、どこからきたものであろうか?

結局この試合、延長11回までもつれこみ近鉄が1点差で勝利を収め、ダイエーはまさかの3連敗。試合後、まさゆき監督は立ち上がって豪快にガッツポーズを連発し勝利の雄叫び。理不尽な首位強奪だ。

いっぽう、ここ一番での勝負弱さはもはやLOCKER監督のお家芸となりつつあるとの声もあがりはじめている。その力弱さは某球団GMを彷彿とさせないこともない。

LOCKER監督って

「ひょっとして、ミスターK二世?」

という評価が定着するのも、時間の問題かもしれない。

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