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2010.05.05

セイバーメトリクスと卓上野球

卓上野球ゲームの魅力は、選手カードから選手の個性が理解できる、ということではないかなと、思います。

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マネーボール。2003年に球界の話題をさらったこの本で著者マイケル・ルイスが記したのは、オークランド・スレチックスのGMであるビリー・ビーンが、他の球団経営者に先んじて、四球、出塁率、OPS(on-base plus slugging)の攻撃面での重要性をいかにして理解したか、だった。STRAT-O-MATICのベテランプレイヤーたちはこの本を好んだ。というのも、その主張に同意するにやぶさかでなかったからだ。ただプレイヤーたちは、これが勝てるチーム作りのための革命的な思想であるという点には、首をかしげた。STRAT-O-MATICのプレイヤーにとって、その考えは「あたりまえ!」のものだったからだ。「他にいったい、どんなやり方があるのか?」と。長きにわたりゲームをプレイしてきた彼らはよく知っていた。たぶんSTRAT-O-MATICの選手カードが教えてくれたのだ。カードにWALK(四球)はヒットと同様に大文字で記されるのが常だ。四球は得点のチャンスであり、STRAT-O-MATICで勝つには、こうした得点のチャンスをつくれる打者が必要なのだからだ。
(Glenn Guzzo, “Strat-O-Matic Fanatics : The Unlikely Success Story of a Game That Became an American Passion”, ACTA Sports, 2005, P.269)
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これは、よくわかります。卓上野球機構でも、出塁率はまず重視すべきパラメータでしたから。アナログ卓上野球が優れているのは、選手の出塁やアウトのロジックがホワイトボックスになっている点です。プレイヤーは選手カードを見ることで、瞬時にその能力を把握できます。打率が高いか、選球眼は良いか、長打力は、盗塁は・・・・。こうした特長をいかに組み合わせ、生かしてゆくが監督(プレイヤー)の腕の見せ所になります。

ところで先日、XR27というセイバーメトリクスの指標で遊んでいて、ふと思いました。セイバーメトリクスのファンにとっての意義は、「新しい指標が生まれると、それだけ見方が増えるということ」であり「野球を楽しむアイテムがひとつ増えたということ」(『野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス』 データスタジアム編・宝島社・2008年, P.12)だというのですが、では、卓上野球機構の選手カードは、どこまで教えてくれるのか、と。で、セイバーメトリクスの指標のいくつかを拾って、見てみることにします。今回は、とりあえず打者カードのほうです。

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OPS(On-base Plus Slugging):出塁率+長打率
いまさらですが、出塁率とはアウトにならない確率であり、長打率はヒットが得点に結びつきやすい率を表します。セイバーのもっとも代表的な指標のひとつですね。カードから、どの選手のOPSが高いかを判断できます。まずヒットと四球±の合計から、打者の基本的な出塁率を判断できます。また、本塁打、二塁打、三塁打のダイスの目の個数から、選手の長打率を判断できます。

SecA(Secondary Average):(塁打-安打+四球+盗塁-盗塁死)/打数
上記のOPSに対して、単打を除くことで、選手の長打力の高低をより顕著に判定する指標です。さらに投機性の高い盗塁の成功・失敗を評価に加えています。これは上記OPSに加え選手カードの盗塁の成功範囲を併せて見ることで、あるていど判定できます。

BB/K(Walk per Strikeout):四球/三振
四球と三振の比率を見ることで、打者の選球眼の良し悪しを測る指標です。カードでは、四球±がプラスならば選球眼が良いことをあらわし、また三振のダイス範囲とあわせてみることで、BB/Kを計算するのと同様に打者の選球眼を測ることができます。

IsoD(Isolated Discipline):出塁率-打率
ヒット以外での出塁能力をあらわす指標です。ヒットのダイス範囲と四球±を加えれば打者の出塁範囲となります。ですから、打者カードから見たとき、IsoDはそのまま四球±で表現されます。打者によっては、四球±がマイナスの場合があります。このような場合、出塁率が打率を下回るということになってしまい、おかしいと感じられるかもしれません。しかし、投手カードには投手の四球のダイス範囲が付与されています。この平均値は41-43、つまり3です。ですから、打者カードからIsoDを判断するのであれば、3を四球±に加えます。一般的にIsoDは、10%を超えると優秀とみなされるそうです。例示されている青木選手が左投手と対戦するときのIsoDは、3+(+3)=6となり、これは1/36×6=16.6%となります。対右投手の場合でも、3+(+1)=4で、1/36×4=11%です。青木選手が選球眼に優れ、出塁する能力が高いかがわかりますね。

G/F(Groundball to Flyball Ratio):ゴロアウト数/フライアウト数
ゴロアウトとフライアウトの割合を示すのがG/Fで、ゴロボールヒッターなのかフライボールヒッターなのかといった、打者のタイプを見るための指標のひとつです。これは打者カードの凡打を判定する列に、ゴロアウトの数がどれだけあるかを見れば、すぐにわかります。選手を比べてみると、ここにも特徴があるのが一目瞭然です。

HR/OF(Home Runs as a percent of Outfield Flyballs):ホームラン/(外野フライアウト+ホームラン)
外野へ飛ばす能力とそれが本塁打になる確率を示すことで、選手の長打力を測る指標のひとつです。カードの本塁打のダイスの目と外野フライのダイスの目の数を見れば、おおよそ、この特徴を把握できます。というか、カードを眺めていると、ホームランが多い選手は凡打も外野フライが多い傾向にあるなあ、というのがわかってきたりもします。

内野安打割合:内野安打/安打×100
選手のヒットの内訳を示すひとつの指標でしょう。カードのヒットの列の、内野安打の数を比べれば、選手の個性が見えてきますね。

他にも、Power-Speed-NumberとかBABIP 、RC、XR、TAなどいろいろな指標がありますが、それらを導くための要素は概ねカードに記載されているといってよいと思います。プレイヤーはカードの選手の能力値から、(そうした指標を知らなくても)無意識のうちにそれら指標の高低を測っているような気もします。

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コメント

お世話になっております。
「野球ゲーム趣味」のうずランドです。

小学生の頃、初めて野球ゲーム的なものを自分で作ってみた際、参考にしたデータは選手名鑑の簡単な昨シーズンの成績のみでした。

現在はセイバーメトリクスの指標はもちろん、打者の対左・対右投手別の打率など、以前では考えられないほど詳細なデータがたやすく見られるようになって、なんというか隔世の感がありますね。

「野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス」は私も読みました。
それによると、日本のプロ野球の監督の中で岡田現オリックス監督はセイバー的な選手起用をしているそうで、今季はバファローズに肩入れしている(借金が増え始めた……)私としては、その采配の妙に注目したいところです。

ところで、「全員中村剛也打線」の実験はおもしろかったです。
こういうのは、最近の電源系野球ゲームソフトでは実現しにくい遊び方なので(ベスプレくらい自由度が高ければできる)、アナログ野球シミュレーションならではの企画だと思います。

投稿: うずランド from 野球ゲーム趣味 | 2010.05.09 12:07 午前

コメントありがとうございます。

確かに、近年の記録の入手のしやすさ、詳細度の向上には、目を瞠るものがありますね。(データもずいぶん身近になりました。)

私は特にセイバーを深く研究したりしているわけではないのですが、選手の個性を知るアプローチのひとつとして、興味を持っている次第です。

投稿: 事務局長 | 2010.05.09 11:01 午前

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