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2010.05.26

AVS -APBA vs. STRAT-O-MATIC-

エイリアン対Sなんとかではありません。

APBAとSTRAT-O-MATICは米国では卓上野球の2大ブランドだそうです。

「両社はその初期に市場で優位を占めていました。競合がやってきては去り、いまでも優位を保っています。スポーツゲームでは両社の製品は古典となっているのです。モノポリー、スクラブル、クルーのようにね」
ゲーム業界の専門家の試算では、過去半世紀に2社が販売したゲームは100万セット以上という。STRAT-O-MATICがAPBAのセールスを抜いたのは1980年代初めである。両社の統計によると、ゲームは「男のホビー」である。女性プレイヤーは全体の5%にすぎない。APBA とSTRAT-O-MATICはもっと若い年齢層をとりこもうと試みているが、プレイヤーの年齢の中央値は35~45歳である。
APBA(アップバーと発音する)とSTRAT-O-MATICはスポーツ・ボード・ゲーム業界におけるフォードとGMであるが、関係は友好的である。お互いに相手の製品を賞賛し、敬意を払っている。リッチマンはAPBAの創立者でありゲームを発明し、1992年に亡くなったリチャード・シーツを「業界を立ち上げてくれた」と賞賛している。
(Bob Herzog,“Take Me Out To the Board Game: For APBA and Strat-O-Matic, the combination of baseball and statistics is one of the sweetest things on Earth”, New York Newsday Wednesday August 29, 2001)


上の新聞記事によれば、APBA と STRAT-O-MATIC の両社は、お互いをいわば「リスペクトして」いて、過剰な競争関係にはないようです。しかし、これは会社同士の話であって、プレイヤーは違うのかもしれません。

以前にご紹介した野球ゲーム小説“ROLL! THEY CRIED”(「サイコロを振れ! とみなは叫んだ」)は、APBAがメインに据えられた小説です。その中に、とても興味深い、前から気になっていたシーンがありますので、ご紹介します。APBAファンと STRATファンの対決です。(ちなみに筆者は、別にどちらか一方のゲームに過剰な思い入れがあるわけではございません。念のため)

主人公一行は自分たちが主催するAPBA大会の地へ向かう途中、別の車とあわや接触事故を起こしそうになる。相手の車に数名が乗車していたが、最初はお互いに友好的かつ紳士的。ところが、相手がAPBA(STRAT)のファンだと知ると・・・・。

以下、同書P.116-118より抄訳です.


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「どうもご親切に。ところで、どちらへ行かれるのです?」

「サン・ノゼのSTRAT-O-MATICのトーナメントに行くところだよ。君たちは?」

「すごい偶然だ。俺たちは、自分たちが主催するゲーム・トーナメントへ行く途中さ。APBAなんだが」

重苦しい沈黙が埃っぽい十字路に降りてきた。スクイージーを取りに行こうとしていた男は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。まるで、バッチ・キャシディとサンダンス・キッドが、優しく「手を挙げてくれよ」と頼んだみたいに。他の面々は間隔を詰めて固まり、無意識のうちにその団結を誇示した。

「APBAだあ・・・・」

年嵩の男が髭のない顎をなでながら言った。口調には軽蔑が明らかだ。

「そのとおりさ」

アール・ビーベイが進み出たが、声は裏返って女みたいだ。

「こりゃ、すげえや」

ちびが小馬鹿にしたように言う。

「見たところ、まあ、あんたらは、よほどSTRAT-O-MATICを手に入れるのが難しい土地から来たんだな。ベネルクス三国のどっかか、そうでなきゃ、ミクロネシアか?」

「別にあの変わったゲームなら、いつでも買えるんだよ、俺たちは」

と、アールが眼鏡をはずす。

「思うにどうも、俺たちは忙しすぎたようだ。APBAのすばらしい出来映えのコンポーネントを褒めるのにな」

相手グループに不満の意を表明するざわめきが起きた。APBA隊はアールの背後で隊列を詰めて備える。赤毛が皮のジャケットのポケットに手を突っ込み、舌で口の中をなめ回した。

「はあ、確かにいいよな。APBAは、パーツが」

嘲りがぽたぽた滴り落ちている。

「APBAはだ、素敵な息抜きさ。超統計的に正確なSTRAT-O-MATICの合間に遊ぶには」

リックはあんぐりと口をあけた。母なる大地で26年間生きてきて、こんなにもムカつく台詞を聞かされたのは始めてじゃないか。敵は真っ赤に焼けた火矢を射込んできているのだ。

「お前ら、自分が何を言ってるのか、わかってんのか」

アールが応酬する。

「いいさ。お前ら、疲れんてんだろ。日がな20面ダイスを振ってたんだから」

アールの背後でジェイクとリックがクスクスと笑う。これが直撃弾だったからだ。この一撃は、STRAT-O-MATIC隊の自尊心をズタズタにしてしまったはずだ。
赤毛がシュガーレス・ガムを口に中に突っ込み、ゆっくり、ゆっくりと噛み始めた。目がスリットのように細くなってゆく。

「ご心配には及ばないさ。選手カードを出場試合数を確認して並べるほうが大変だろ」

低くしわがれた声だ。敵はこの意見を支持する唸り声を発した。

「おい、みんな。ちょっと馬鹿げてないか」

ジャージー・プレンクが割ってはいる。

「宇宙の壮大さに比べたら、取るに足りない趣味の話じゃないか。それで揉めるなんて、下らないだろ。時間の浪費はやめようよ。せっかく、新たな友情を育むチャンスじゃないか・・・・」

だが、アールは止まらない。反撃。

「おい、選手カードはどうやって保管してるんだ。いや、言うな。知ってるさ。『みずぼらしい輪ゴムで束ねてます。だって趣味のよい保管用封筒がないから』だろ。せっかく青春の半分を費やして、ミシン目のはいったバカでかいシートから切り離したのにご愁傷様。もったいない話だな。ところでだ、こいつは間違いないところだと思うが、よく見てくれよ、そこの道路脇を。ドライブも雨天中止ってところだな。どうしてそうなったかわかるか。へへっ、雨天中止なんていう結果がお前らのゲームにはないからだよ」

「こいつは効いたな」
カースがため息混じりに賞賛した。アールにはまばゆき光に包まれていた。

「おれたちのゲームはだな、あらゆるテーブルトップ・スポーツの中でも、いちばん沢山のファンに支えられているんだよ。ミスター《俺ってとてもクールだぜ、なんたって選手の出身地を知ってるんだカードに印刷されてるからな》さんよ」

赤毛が吹き出した。

「おまえらは、能無しのチャートめくり野郎さ」

「チャートはな、頭文字やハイフォンの束より、よっぽど生き生きとプレイの様子を説明してくれるんだよ」

「おまえらの長ああああああくて、平べええええええったい箱を愛してるぜ!クローゼットの奥にでも、しまう場所が空いてりゃいいがな」

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なんだか、2つのゲームの特徴をうまく捉えた応酬になってます。
これはこの作者、それなりに卓上野球が好きで、遊んだくちではないのでしょうか?

Dscf1395
確かにSOMの箱は長い。

Somc01
SOMはこのでっかいカードシートを自分で切り離せばならない。

Somc02
コンポーネントには20面ダイスと、本当に輪ゴムが同梱されています。この輪ゴムで選手カードを束ねよ、ということのようです。

Somc03

Somc04
上は1980年代初頭(?)のSOMのルール。紙1枚に記述して終わり。(他にチャートとかはあります。)
下は現代のルールブック。冊子になり20ページほどあります。

それにしても、APBAとSTRATのファンって、(これは小説だから面白く誇張して書いてあるにしても)お互いに自分のゲームが一番と思って譲らないところがあるのかなあ?

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コメント

興味深い話ですねえ。私などはSTATIS PRO命ですので冷静に見られますが。
START-O-MATICは私の持っているやつは20面ダイスではなく、カード式でした。妙なこだわりがあったのか古くさい方式だなあ、と思っていましたが、変わったんですね。APBAはランナーの状況ボードがでか過ぎなのが難でした。2000年位に新しいバージョンが出たみたいですが、持っていません。

しかし下記のサイトを見るとStatis Pro人気も高いみたいです。
まあ、版元ももうないですしね。
http://www.tabletop-sports.com/index.php

投稿: 幕張本郷猛 | 2010.05.25 10:17 午後

コメントありがとうございます。
うれしゅうございます。

STRAT-O-MATIC は、確かに私が80年代初頭のやつはSPLIT CARDという1-20のカードがついていました。(20面ダイスのコストが高かったのでしょうか・・・)

統計的にSTRAT-O-MATICのほうが正確、というのは、ゲームシステム的にはそうではないかなあ、と思ったりもしてます。

STATIS-PROは、現在も愛好者多いみたいですね。
自作カードが今でもUPDATEされているんですね。

http://tabletopbaseball.org/spc.html

STATIS-PROの版権は、AHから版権を引き継いだHASBROが、今でも持っているのでしょうか・・・。

投稿: 事務局長 | 2010.05.26 09:34 午後

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