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2010.04.06

セ・リーグ 最後の10日間

また、旧会誌「エンドラン」からの再録です。

2001年卓上野球機構シーズンは、前期・後期各70試合が行われました。

いや、みなさんパワーがありましたね。


今回の記事は2001年前期終盤のものです。

このシーズン、巨人、ヤクルトが熾烈なマッチレースを演じました。

巨人は美貌のナオミ監督。機構史上唯一の女性監督であります。

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7月7日の七夕の夜、神宮球場は熱かった。スワローズ対ジャイアンツの最終戦。この最後の三連戦、ジャイアンツに連敗し首位を奪われたスワローズには後がない。負ければジャイアンツにマジック点灯、勝てばスワローズが首位を再奪取して、逆にマジック6を点灯させられる。この夜は名実ともに、今シーズンの天王山であった。試合は、スワローズが5-4で辛勝して待望のマジック点灯。しかし、残り6試合でのマジック6であり、全然、予断を許さぬ状況にかわりはなかった。直接対決がすべて終了したいま、モリタニ、ナオミ両監督は、競争相手の戦いを横目でにらみつつ、眼前の敵を撃破していかねばならない。暑く長い、セリーグ2001年前期ペナントレースの最後の10日間が始まった。

7月7日時点 <セ・リーグ順位表>
1.ヤクルト 64試合41勝23敗0分  .641   M6
2.巨  人 65試合41勝24敗0分  .631  0.5差
3.阪  神 65試合31勝34敗0分  .477 10.0差
4.横  浜 64試合29勝34敗0分  .460  1.0差
5.中  日 66試合28勝38敗0分  .424  2.5差
6.広  島 65試合24勝41敗0分  .369  3.5差

残り試合日程
      8 9 10 11  12 13 14 15 16
ヤクルト 神 神   横  横   横 横
巨  人 中 中   広  広    横

7月8日

残り試合の日程を見た場合、ヤクルトのマジック6が実に危ういものであるか、一目瞭然である。巨人は中日、広島、横浜といったお得意様中心で、5連勝も夢物語ではない。これに対して、ヤクルトは残り6試合のうち4試合が横浜である。ヤクルトは阪神、広島、中日には大きく勝ち越しているが、横浜とこは、ここまでほぼ互角の対戦成績。加えて理性派・モリタニ監督は、ラック魔人・モジ監督と相性が悪い。微妙なプレッシャーが、選手たちの頭上に静かにたれこめてくる。
しかし、当面の敵は幸いなことに阪神。とにかくこの2試合を二つともいただくことが、ヤクルトベンチの至上命題である。ハッカミー、藤井、高橋、五十嵐とつなぐ綱渡り継投で、こちらも福原、遠山、伊藤、西川というリレーで粘る金吾・阪神をかろうじてつきはなし、マジックを5とする。
同日、東京ドームに中日ドラゴンズを迎え撃ったナオミ・ジャイアンツは、高橋由14号2ラン、後藤13号、仁志7号、清原16号、松井27号各ソロ、村田善6号3ランという、月は無慈悲な夜の女王のような(女王様だったからしかたないのだが)本塁打攻勢を発動し、中日先発・前田を火だるまにした。全得点を一発でたたき出す、弱いものを徹底的に打ちのめす豪快な野球に5万5千の観衆は酔いしれ、ジャイアンツ奇跡の逆転優勝(いまや卓上野球機構では、シーズン終盤の巨人を形容する常套句となりつつありますな、このフレーズ。毎シーズン言ってないか?)が、決して絵空事ではないことを、改めて確信するのだった。

1.ヤクルト 65試合42勝23敗0分  .646   M5
2.巨  人 66試合42勝24敗0分  .636  0.5差
3.阪  神 66試合31勝35敗0分  .470 11.0差
4.横  浜 65試合30勝34敗0分  .469  0.0差
5.中  日 67試合28勝39敗0分  .418  3.5差
6.広  島 66試合24勝42敗0分  .364  3.5差

7月9日

ヤクルトは先発の石井弘が好投。宮出、高津とつないで、タイガースの反撃を和田のソロ1本におさえ3-1と快勝。いっぽう、巨人は松井が28・29号を連発、清原も17号とあいかわらずのスラッギングマシンぶりを見せつけるが、先発・河原が崩れて4-6と痛い星を落とした。これでヤクルトは残り4試合でマジック3。
「これで、ひとつ負けてもいいんですよね。ね、ね」と報道陣に何度も念を押す試合後のモリタニ監督の姿には、なぜか哀愁が漂う。

1.ヤクルト 66試合43勝23敗0分  .652   M3
2.巨  人 67試合42勝25敗0分  .627  1.5差
3.横  浜 65試合31勝34敗0分  .477 10.0差
4.阪  神 67試合31勝36敗0分  .463  1.0差
5.中  日 68試合29勝39敗0分  .426  2.5差
6.広  島 67試合24勝43敗0分  .358  4.5差

7月11日

ヤクルトの残り4試合はすべて横浜が相手。横浜は巨人とも1試合残しており、完全にキャスティングボードを握った格好だ。思えば先シーズン、ヤクルトは終盤まで横浜と優勝を争いながら、最後の直接対決3連戦に負け越しV逸した苦い経験がある。あの悪夢が再来するのではないかとの重圧が、モリタニ監督に重くのしかかる。
横浜・モジ監督も、監督続投にはAクラス入りが至上命題。残り5試合、決して手を抜くことは許されない。なにより3シーズン連続日本一チームの矜持と誇りが、ヤクルトや巨人の安易な優勝を許さないという姿勢に直結する。
「ヤクルトを討ち、返す刀で巨人もなで斬り。ヤクルト、巨人のプレイオフに持ちこんでやる」
と鼻息も荒い。
初回、ヤクルトは横浜先発の三浦を早くもつかまえ、二死満塁と攻め立てるが、結局1点しか取れない。これがあとあとまで響いた。3回、横浜は谷繁ヒットのあと、なんとピッチャー三浦に石井一久が四球を与えてしまう。続く石井琢も四球。2番金城にあっさり2点タイムリーを許し、たちまち逆転されてしまう。満を持して登板させたエースにしては不甲斐ないピッチング。ナオミ監督に「●が変」と言われてことが響いたのであろうか?
6回にはかわった山本樹が伏兵中の伏兵多村にソロを浴びるという誤算もあり、結局1-3で試合を落とした。
この日、巨人は松井が30・31号と連夜の大暴れ。高橋由も14号をかっとばし、投げては工藤が1失点完投勝利と、広島を圧倒し、地力の差を見せつけた。
結局、この日、ヤクルトはマジックを減らすことができず、モリタニ監督も消沈。
「もう、ひとつも負けられないんだよね」
と、マイナス思考炸裂で、選手の間にも暗いムードが漂い始めた。

1.ヤクルト 67試合43勝24敗0分  .641   M3
2.巨  人 68試合43勝25敗0分  .632  0.5差
3.横  浜 66試合32勝34敗0分  .484 10.0差
4.阪  神 68試合32勝36敗0分  .470  1.0差
5.中  日 69試合29勝40敗0分  .420  3.5差
6.広  島 68試合24勝44敗0分  .352  4.5差

7月12日

梅雨明け宣言も未だ出ていない関東地方は雨。横浜スタジアムのヤクルト-横浜戦は翌日に順延されたが、東京ドームでは予定通り巨人-広島最終戦が行われた。実は順延された翌日の試合を1回裏途中までプレイしかけたモジ監督とモリタニ監督であったが、隣の東京ドームの嬌声が気にかかり、時間を止めて(試合を中断して)二人して東京ドームまで観戦に赴いた。そこで二人が見たものは――
巨人・ナオミ監督は先発上原を2回途中で降ろし(上原は泣いていた)、岡島、三沢、高橋尚、柏田と前後の見境のないシックスセンス継投を広島打線にご馳走。ホームランは二岡の一本しか出ないのに7点もとるという珍しい試合展開で快勝し、ヤクルトとはゲーム差なしに。優勝にまだまだ望みをつないだのである。

1.ヤクルト 67試合43勝24敗0分  .641   M3
2.巨  人 69試合44勝25敗0分  .637  0.0差
3.横  浜 66試合32勝34敗0分  .484 10.5差
4.阪  神 69試合32勝37敗0分  .463  1.5差
5.中  日 70試合30勝40敗0分  .428  2.5差
6.広  島 69試合24勝45敗0分  .347  5.5差

7月13日

今日の横浜戦を、ヤクルトは落とすわけにはいかなかった。落とせば残り2試合の横浜戦に連勝しても、巨人が横浜との最終戦に勝利すれば、同率プレイオフに雪崩れ込んでしまう。3試合のプレイオフで巨人に勝つ自信は、モリタニ監督にはまったくなかった。シーズン前半こそ巨人に勝ち越したが、中盤以降は押されることが多く、五分の星に持って行くのがやっとだったのだ。ナオミ監督は、着実にヤクルト戦の勝ち方を体得しつつある。そんな危惧が、モリタニ監督の背筋を寒くさせた。
「伊藤、たのむ!」
そんなモリタニ監督の悲鳴が、先発・伊藤智にも通じたようだ。初回、金城二塁打、ローズのタイムリーで1点を失ったものの、2回以降は散発4安打、三塁を踏ませず堂々の1失点完投勝利で横浜をねじ伏せ、マジックを減らした。残り2試合でマジック2。明日の横浜戦で巨人が勝てば、ヤクルトは連勝を強いられ厳しい。逆に巨人が敗れればマジック1でヤクルト有利だ。
「うちも5割、Aクラスがかかっているし、巨人にのめのめとやられるわけにはいかない。なあに、目にもの見せてやりますよ」
完全にペナントの帰趨を左右する立場に立ったモジ・横浜監督は、敗戦にもかかわらず上機嫌で横浜スタジアムを後にした。

1.ヤクルト 68試合44勝24敗0分  .647   M2
2.巨  人 69試合44勝25敗0分  .637  0.0差
3.横  浜 67試合32勝35敗0分  .477 11.0差
4.阪  神 69試合32勝37敗0分  .463  1.0差
5.中  日 70試合30勝40敗0分  .428  2.5差
6.広  島 69試合24勝45敗0分  .347  5.5差

7月14日

今シーズン横浜スタジアムでの最終戦、しかも巨人戦とあって、スタンドは満員。三塁側からレフトスタンドまで、オレンジ色のメガホンで埋まった。今日勝てば、巨人逆転優勝、あるいはプレイオフの可能性が、かなり高くなる。
1回表、先頭打者の仁志がいきなり四球で出塁。二岡がセンター前へはじき返し、さらに清原が歩いて無死満塁と、大量得点の絶好機。4番松井はレフトへ犠牲フライを打ち上げ、まず1点。しかし後続が凡退し、結局1点どまり。ビッグイニングを作ることができなかった。
対する横浜は、昨シーズンの覇者の意地をみせる。2回裏、二死からセンター松井のエラーをきっかけに5連打。谷繁、進藤がヒットで続き、金城が逆転タイムリー。そして留めは鈴木尚。満塁のチャンスにためらうことなく振りぬいたバットは、三番手高橋尚の速球をライトスタンド上段へライナーで運ぶグランドスラム弾。ライトスタンドは興奮の坩堝、レフトスタンドは沈黙だ。結局この一発が巨人V逸の弔鐘となる。
ナオミ監督の采配は超絶的とも評されるが、この日は、なにかおかしかった。先発のメイは先頭石井琢にヒットを打たれたものの、続く金城を三振に切って取った。が、しかしここでナオミ監督自らマウンドへ足を運び、メイを降板させる。腕が振れていないとか、メイの仕草がおかしかったとか、そういう様子でもなさそうであったが、いったい何がおこったのか。プライドをいたく傷つけられたメイは、ベンチに戻るやグラブを叩きつけて、ロッカーへと消えてしまった。
あとを襲った工藤もピリッとせず、2回に塁上に油をまいて降板。高橋尚がそれに点火してしまった格好だ。しかも今度はその高橋尚を4回まで引っ張り、5回表からはお気に入りの岡島をマウンドへ。この岡島も6回先頭打者の石井琢に不用意なソロを浴びてしまうと、さっさとあきらめ南を送る。8・9回は柏田まで投入する、まるでファン感謝デーの顔見世興行みたいな、継投であった。
巨人は8回に高橋由の15号が飛び出したもの反撃はこの一発のみ。矢野、木塚、小宮山、モジ中の必勝リレーにかわされ、完敗を喫した。ヤクルトはついにマジック1。
明日から巨人首脳陣ができることといえば、テレビの前に座ってヤクルトが敗れるのを祈ることしかない。

1.ヤクルト 68試合44勝24敗0分  .647   M1
2.巨  人 70試合44勝26敗0分  .628  0.5差
3.横  浜 68試合33勝35敗0分  .485 10.5差
4.阪  神 70試合33勝37敗0分  .471  1.5差
5.中  日 70試合30勝40敗0分  .428  3.0差
6.広  島 70試合24勝46敗0分  .342  6.0差

7月15日

試合開始前から神宮球場は異様な熱気に包まれていた。昨シーズン、眼前で胴上げされた遺恨を晴らすべく、スワローズナインは燃えていたが、その意気込みが力みにつながり、空回り状態になることをモリタニ監督は恐れていた。ヤクルト先発は、今シーズン最優秀防御率を狙う左腕・ハッカミー。1回表、横浜は三者凡退。その裏、ヤクルトは先頭打者飯田が遊ゴロに倒れるも、2番・真中がしぶとく四球を選ぶ。続く宮本のあたりは平凡なサードゴロ。ところがサード金城が、このなんでもないボールを一塁へ悪送球。エンドランがかかっていた。真中は俊足を飛ばして一気に三塁を回りホームイン。宮本も二塁へ達する。幸運な先制点にヤクルトベンチは大喜び。4番ペタジーニはシュアにライト前へ運ぶタイムリー。そして、ここまでチーム本塁打王の古田がセンターバックスクリーンへ運ぶツーラン初回、一気の4得点に、ライトスタンドからは東京音頭がなりやまず、もはや優勝したかのような騒ぎだ。
しかし、横浜先発の川村も2回以降立ち直り、以後、4回まで両チーム無得点。横浜は5回に進藤のタイムリー、6回には中根の二塁打で3点を返し、1点差に追い上げるが、ヤクルトも7回、ヒットで出塁した度会を飯田が返してつきはなす。
こうなれば、もうヤクルトペース。8回頭から高津と並ぶ抑えの二枚看板の一人、五十嵐がマウンドへ。が、この五十嵐が、代りばな、いきなりローズにソロを浴びてまたもや1点差に。続く中根にも四球、二死後、谷繁にも四球を与え一二塁のピンチ。一発出れば逆転の場面だ。内野陣と伊東投手コーチがマウンドへ。
「どうだ、五十嵐、行けるか?」
「自信ないです。当てたらスタンドインしちゃいそうです」
「なんちゅう、弱気な。背中に書いてある(-3)はこけおどし、と誰かが言っていたが、ほんとうらしいな」
これには、さすがに五十嵐もむっとした様子。
「誰ですか、そんなこと言うのは。コーチじゃないですね?」
伊東コーチはチラリとベンチへ目をやった。
「わかりました。監督がそこまで言うんなら、投げます」
憤然とした面持ちで帽子を被りなおした五十嵐は、代打・石井義をみごと三振にきってとった。その裏、ヤクルトはあっさり三者凡退。
残るは9回。1イニング。
五十嵐は続投を命じられて意外そうな顔をした。
「高津さんじゃないんですか?」
「監督は――」
伊東コーチはにやりと笑って言った。
「おまえに任せるそうだ」
「えええっ、1点差で被本塁打修正+3の自分にですかあ?」
そのとき、それまで黙ってフィールドを見つめていたモリタニ監督が怒鳴った。
「丙丁つけがたいということだ、行ってこい!!」
驚いた五十嵐は、泡を食って
マウンドへ走り、緊張する間もなく石井琢をファーストフライ、金城、鈴木尚を連続三振に切って取った。
自分が胴上げ投手だなんて。五十嵐は夢見心地で宙に舞った。
18年ぶり――。
1983年、モリタニ監督は西武ライオンズを率いてリーグ制覇を成し遂げた。あのときは、若かった。勝利、それだけを考えて、不本意な戦術も多用した。バント魔、スクイズ野郎と罵倒された。野球がつまらない、と酷評された。しかし、今シーズンはちがった。バントを命じても、全然、成功しなかった。タッチアップも盗塁もエンドランも、あまり決まらなかった。選手が言うことを聞いてくれなかった。ひょっとして、わざと失敗してるんじゃないかと、疑心暗鬼にかられたこともあった。悲しい。でも、結果オーライだ。選手は駒じゃないんだから。
いいじゃないか。
熱いものがこみあげてきた。
「八重樫くん、目薬はないか」
「監督、どうされたのですか?」
ヘッドコーチが、訝しげに顔をのぞきこんだ。
「いや、どうも歳のようじゃわい。カクテル光線が目に沁みていかん」
差し出された目薬をさしたが、量が多すぎたのだろうか。目から滝のように水滴が流れた。それは、ほんとうに目薬だったのだろうか・・・・。

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